第7章 ナイフと紺色の手帳-ヒヨクノトリ-
「燕野君、焦らないで一緒に頑張っていこう。私もまだまだ見習いみたいなものなの」
「それを言うなら私なんて見習いどころかド素人ですよ」
「ド素人…ですか?」
「本は好きだけどまだまだ知識不足。それにフクロウに入るまでは稀モノの存在も知らなかったんです」
「そうなんですか」
「だから焦らず自分のペースでゆっくりと歩いていけばいいんですよ」
「…はい!」
私達は杙梛さんのお店を出る。
「さて、と…次は笹乞のところか。また燕野が苛められなければいいけどな」
「お気遣いなく!大丈夫ですよ!」
「ちょっとまぁ…癖のある方なんで何を言われても気にしないで下さいね」
「もし何か言われても私がガツンと言うので安心して下さい」
「立花さんがですか?」
「ええ」
ニコッと笑う私に燕野さんは首を傾げた。
そうして私達が笹乞さんの店の近くまで来た時のことだった。
「…あれ」
滉が不意に足を止めた。
「…胡散臭いのがいるな」
隼人の視線を追うと、店から少し離れたところで中年の男性が様子を伺っている。
「…妙な感じですね」
私達は足を止め、素早く物陰に潜む。
けれどその男が何気なくこちらを向いた瞬間、いきなり走り出した。
「追うぞ、滉!翡翠達は笹乞の店に行け!」
「よし!」
「分かりました!」
「お任せ下さい!」
二人は怪しげな男を追いかけて行き、私達は笹乞さんのお店に駆け出した。
「失礼します!警察です!」
「………?」
私達はそうして勢いよく店に飛び込んだものの、出迎えたのは──いつも通りの笹乞さんだった。
「…ふーん。今日は警察と一緒なんだ?全く、役に立たないのが揃って騒々しいなあ」
「え!」
「あれ…いつもと変わらないんですね。さっきの男は関係ないんでしょうか」
「探してみるね」
ツグミちゃんは密かに言葉を交わし、いつものように店の中に視線を巡らせ始めた。
「お騒がせして申し訳ありません、笹乞さん。実は今、近所で不審な男を見掛けたものですから、何かお怪我はなかったかと…」
「不審な男?…ああ、つまり、ボクがそいつの仲間じゃないかと疑って入って来たってことね」
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