第7章 ナイフと紺色の手帳-ヒヨクノトリ-
「(…そんなに嬉しそうな顔されても…)」
「あーほんと面白いな、立花は」
「面白い要素なんてなかったよね?」
「紫鶴さんや杙梛さんが揶揄うのも分かる気がする」
「!?」
「しかし驚いたな!俺以外の奴にペリが懐くなんて!お嬢さんにも驚かされたけど!」
「そこはもう綺麗さっぱり忘れて下さい…」
「そいつの名前はペリ。何年か前に仕入れ品と一緒にくっついてきてさ。猿だか犬だか熊だか、それとも他の生き物なのか分からないんだ」
「そうなんですか」
「ほら、猿子にかなり念入りに調べてもらったんだけどさ、結局判明しなくてさ」
「…あの人が調べても分からないなら、相当珍しいんでしょうね…」
「だろうな。それで、悪さするわけでもないし、面白いから飼うことにしたんだ」
「てっきり縫いぐるみかと思ってました…済みません…」
「いや俺達でさえ今日の今日まで、動くところを見たことがなかったから」
「きゅ!きゅ!きゅうー!きゅきゅ!」
「はぁぁぁ…癒される」
ペリの可愛さにメロメロになってしまった私は、その手で頭を撫でた。
「すっごく可愛い、ウルトラ可愛い」
「きゅーきゅきゅ!きゅっ!きゅー!」
「喜んでる喜んでる」
差し出した指にペリが頬を寄せる。
「……………」
杙梛さんの質問には正直驚いた
私も大概ウソツキだな
「(人が犯した罪、か───……)」
悲しげに瞳を揺らし、表情を沈ませる。
「……………」
その様子を隼人が見ていたことに、私は気付くことはなかった。
「…ところでさ。そろそろ本来の仕事を全うしたいんだけど、今日は何がある?」
「(そうだ、私達は稀モノを…)」
滉の言葉に本来の目的を思い出す。
「なし」
「…和綴じ本さえも、ですか」
「注意令が効いてるかねぇ、やっぱり」
「なし、というのは稀モノが…ではなく、本そのもの、ということですか?」
「そうなの」
「…そうか。そうですよね。そんな簡単に見つかるものではないんですよね…」
「落ち込むな!しゃきっとしろ!」
「あ!は、はい!!申し訳ありません!」
燕野さんの落ち込む姿に隼人が喝を入れる。
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