第7章 ナイフと紺色の手帳-ヒヨクノトリ-
「あー…お嬢さん?嬉しそうに一人ではしゃいでるとこ悪いんだが…」
「…な、何ですか」
「そいつは食えないぜ?」
「っ〜〜〜!!分かってますよ!!そんなことは!!」
「お」
恥ずかしさで叫んだ私に驚いた杙梛さんが声に出す。
「この子がこんなに可愛いのがいけないんです!!流石に本気で食べたりしませんよ…!!食べたいくらい可愛いってことです!!そこは誤解しないように…っ!!」
息継ぎをせず一気に喋ったからか、呼吸が乱れる。するとまたも全員がさっきと同じように固まった。
「な、何で黙るんです…?」
「ははは!!」
「!?」
「お嬢さんのそんな顔を見たのは初めてだ。いやぁーいいもんが見れた!」
気付けば他のみんなも笑いを堪えているようにも見えて、恥ずかしさで顔が真っ赤になる。
「わ、笑うなんてヒドイ!」
「い、いえ…その…」
翡翠は笑いを堪えながら困った顔をした。
「ツグミちゃんと燕野さんまで!」
「じ、自分は笑ったりは…!」
「違うのよ詩遠ちゃん。普段の貴女を知っているから、さっきのような貴女を見るのは初めてで…意外だっただけよ」
ツグミちゃんが必死にフォローしてくれるが、その横にいた二人を見てムッとした。
「そこの二人も!どうせ笑いを堪えてるんでしょう!?だったら思いきり笑えばいいじゃない!!」
「あはははは!!」
「そ、そこまで笑うなんて…」
「隼人!笑い過ぎですよ…!」
翡翠が窘めるも、隼人は大爆笑だ。本人は一頻り笑った後、目に溜まった涙を拭った。滉に至ってはもう無表情だ。
「ごめんごめん、違うんだ立花」
「何が違うの!」
「まぁまぁ、そんなに怒るなって。久世の言った通り、本当に意外だったんだよ。あんなお前を見るのはさ。だから少し笑いが出ちゃっただけなんだ」
「少しどころじゃない!
思いきり爆笑してたけど!?」
隼人に詰めよれば、彼はどこか嬉しそうに言い、私を見下ろす。
「でもそっちの方がいいな」
「え?」
「今のがあんたらしくて俺は良いと思うよ」
「!」
「なんかグッと距離が縮まった気がした。それだけ俺達に気を許してくれたって事だよな」
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