第7章 ナイフと紺色の手帳-ヒヨクノトリ-
追い掛けてるのが本で良かったかも、なんて内心思ってしまった。
そんなことを考えているうちに、杙梛さんの店に着いた。
「こんにちはー、今日も新人の紹介でーす。
これからご贔屓に───」
「あれ」
「初めまして!自分は燕野太郎と申します!本日よりフクロウの皆さんとご一緒させていただくことになりました!今後はよろし…」
「ごめん、俺、男と警察は嫌いなんだ」
「あはは!」
「そこ!笑うところじゃないでしょう!」
「いやごめんごめん、正直でいいなーみんな。まぁ燕野、気にしなくていいよ」
「は、はい!」
「どうせ、こいつら見張れとか命令されてくっついてんだろ?まぁ適当にやりな」
「適当なんてそんな!自分の全力を尽くすつもりであります!」
「(ここでも見透かされてる…)」
「ところで聞いてみてもいいですか?杙梛さんはどうして警察が嫌いなんですか?」
「上から目線だし、頭固いし、あと何より自分達は善人って思ってるのが嫌い」
「(全員がそうとは限らないけど…)」
「…上から目線と、頭が固いという点は個人の性格もあると思いますが。ですが、自分達は善を貫くべき立場だと思っております。それが帝都の平和と皆さんの安全を守る警察官としての責務と義務ではないでしょうか」
「善悪なんて曖昧なもんだと思うが」
「曖昧じゃないですよ!悪人は罰せられるべきです!」
「善悪なんて所詮、表と裏さ。見方を変えれば善が悪に、悪が善に…そんなのは珍しくもない。じゃあ、お姫さんに聞いてみるか。あんたはどう思う?」
「…仰る意味が分かりません」
「例えば、ある男が米を盗んだ。これは悪か?」
「…悪だと思います」
「窃盗は間違いなく犯罪です!」
「じゃあ、その男が病気で働けなくて、食うのに困って盗んだとしたら?」
「…………!」
「………っ」
その言葉にツグミちゃんと燕野さんは表情を固くする。
「金を無心しても断られ、一週間飲まず食わず…それでもう切羽詰まってやったんだとしたら?ここで食べなければ死んでしまう…そこまで苦しんでいたとしたら?」
「そ、それは…」
「(杙梛さんも意地悪な質問するな…)」
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