第7章 ナイフと紺色の手帳-ヒヨクノトリ-
「い、一体どういう経緯で…?」
「はい!フクロウの皆さんの活動を補佐するようにと仰せつかって参りました!」
戸惑いの色を浮かべる隼人の言葉に燕野さんは元気よく声を発する。
「補佐、ですか…」
「まぁ要するに本庁との連絡係兼雑用係をしろと言うことなんだよな、燕野」
「連絡も雑用も大事な仕事であります!」
「それはあれだな?もっと平たく言うとお前、俺達を見張れって言われたな?」
「(見張り…。何考えてるの、おじい様…。)」
「えっ!?い、いえいえ!そんな滅相もない!!」
「なるほど、理解した」
「違います!決してそういうわけでは!」
納得する滉に燕野さんは慌てて否定する。
「まぁ…仕方ないですよね、僕達煙たがられてるし…」
「あの!どうか話を聞いて下さい!これは自分が申し出たことなのであります!」
そう言って彼は、小さく苦笑した後に続けた。
「…首相のご子息の件で、本庁に圧力がありまして」
「正直だな、お前」
「それで誰かという話になり…自分が真っ先に立候補致しました」
「何でまた」
「本が好きだからです」
彼は淀みない声と笑顔でそう言い切った。
「自分はこの春から勤務になったばかりで、まだまだ未熟者であります。皆さんのお役に立てるか不安ではありますが、それでも精一杯頑張りたいと思います。この命に代えても、立派に…」
「代えなくていいよ、馬鹿」
「!!」
「そういう考え、俺は好きじゃない。取り敢えずお前が正直者で嘘つけなさそうなのは分かったから。俺達のことどう聞かされてるのか知らないけど、そもそも俺達は本の雑用係みたいなもんだぞ?しょーもないことばっかりかも知れないぞ?それでもいいのか?」
「全く問題ないであります!喜んで!」
「……───また、嘘が下手そうなのが」
『また』
滉の言ったそれが誰にかかるものなのか私はすぐに分かったが、敢えて口にしないでおいた。
「…ところで、何故今日は猿子さんが?」
「あ!ああっ!」
燕野さんはどこか恥ずかしそうに声を出す。
「彼が間違えて朝早くに図書館に来たから送ってきたんだ」
「恐縮であります…」
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