第6章 新しい住人-ショウトツ-
「(隼人の…こういうところは凄いな。普通の人なら面倒くさいって思うのに…。)」
「立花はさ、治したいって思ってる?」
「…出来ることなら。でも私の"コレ"はどう頑張っても治せないような気がする」
「何で?」
「試したことがあるの。男の人に対しての恐怖心を無くすために…知り合いにも手伝ってもらったりもしたけど…駄目だったの。何度もチャレンジしてみたけど…触れなかった」
勤めていたお店で働いていた男性スタッフに協力してもらったけど…恐怖心が煽られて身体が震えてしまった。それなら高校時代の男友達にお願いしようと試みたが失敗。結局、男の人に触れないまま年月だけが過ぎ、未だに異性に触れることすら出来ない。
「知り合いって男だよな…?」
「そうだけど…」
「……………」
「隼人?どうかした?」
「いや、何でもない」
一瞬複雑そうな顔をしていたが、すぐにいつもの表情に戻った。私が不思議そうな顔をしていると"気にしない気にしない"と言われ、私はそれ以上追求することを止めた。
「なぁ、今度は俺で試してみない?」
「え?」
「もしかしたら俺だったら触れるかも知れないじゃん。な?そうしよう。」
「(笑顔で押し切られる…。)」
さっきの複雑そうな顔が原因だろうかとも考えたが、憶測で判断するのはいけないと思い、その考えを消した。
「試すって、何するの?」
「ん?お前が克服できる方法だよ。治したいって気持ちがあるなら大丈夫。挫けずにチャレンジにしてみようぜ」
そう言って隼人は人差し指を私に向ける。
「まずは指先から」
「!」
「俺に触れてみて」
「急に言われても心の準備が…」
「ゆっくりで良いから。はい、指先出して。俺の指に近づけて」
「(そうだった。隼人は少し強引だった。これは意地でも私が指先に触れないと終わらないパターンだ…。)」
"これも慣れる為だ"と自分に言い聞かせ、指先をゆっくりと近付ける。
「っ…………」
「大丈夫、怖くない」
「(大丈夫…怖くない…)」
指が止まりそうになると隼人が優しく声を掛けてくれる。緊張感が襲い、心臓の音がドクンドクンと速まり始めた。
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