第18章 Sweet END【★】
長かった冬が終わり、季節は春へと変わっていく。
いつか過ごしたアイリスの園で、花の匂いを胸いっぱいに吸い込む。
「………アズリ」
名前を呼ばれて顔を上げると、エメラルドの瞳が彼女を映し込んだ。
「なに? ナポレオン」
かすかに顔が火照るのを感じながら尋ねると、彼は跪いた。
「これを受け取ってほしい」
そう言って手を取り、薬指にはめたのは。
煌めく宝石のついた華奢な指輪で………。
「これ………」
「ずっと俺の傍にいて」
真摯な眼差しとともに告げられた言葉に、胸がいっぱいになる。
「はい、喜んで………。」
ふわりと微笑み伝えると、彼もみるみるうちに笑みを浮かべた。
「アズリ………」
抱きしめられて、幸福が胸を満たしていく。
「誓うよ。………絶対に、お前を幸せにしてみせる」
「うん………」
震える声で答えると、抱きしめる腕がぎゅっと強くなった。
「もう………、二度と離さない」
さあ……。と優しい風が アイリスの香りをさらう。
咲き乱れる花の園で、ナポレオンの香りと温もりに包まれて………。
言葉にできない想いが溢れ出すように、彼女の頬に透明なしずくが零れ落ちた。
【Sweet END 完】