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君色に染まりて【イケヴァン長編◆裏】

第17章 守るべきもの


食堂を目指して、駆けて。駆けて。

そして、そこに見知った人影を瞳に捉えた。


「テオ、ジャンヌさん………!」

振り向くなり、ぎょっとしたようだった。


「アズリ………!? お前、何故ここにいる」


「私………、この首飾りの力で戻ってきたの。

ねぇ………、ナポレオンは? 彼はどこにいるの?」


「っ………あいつは、」

何故かためらうように唇をかむテオ。


「お願い………、教えて」

「あいつは………、伯爵に連れていかれた」

ジャンヌが、呟いた。


「え………?」


「お前を元の世界に送ったんだろう? それであの男の怒りを買ったってわけだ」

「そんな………。」

くらりとふらついた身体をテオが支えてやると、震えていた。


「こうしちゃいられない………!」

テオの手を振りほどくと、エントランスを目指そうと………。


「―――待て。」

彼女の手首を掴み、引き止めた。



「お前が行ったところで、無駄死にするだけだ。だから………」

「それでも………、私は彼を救いたい」

一点の淀みもない瞳が まっすぐに二人を見つめる。


「お願い………。私を、ナポレオンのいるところへ連れていって」

「………っ、アズリ。俺は」

「お願い………!」

すがるように言うと、それまで黙っていたジャンヌが呟いた。


「良い。行こう………、アズリ」

「ジャンヌッ」

鋭い声が 二人の足を止める。


「テオドルス、覚悟を決めろ。

アズリの心は………、最初から奴のものなのだから」




諭すように呟くと、凍りついたままの彼を無視して彼女とともに駆けた。
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