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君色に染まりて【イケヴァン長編◆裏】

第16章 『片割れ』に焦がれて


出口の見えない、漆黒に塗りつぶされた世界。

そこには、両親の姿があった。



「お父さん、お母さん………!」

すぐさま駆け寄り、抱きついた。


「ごめんなさい、アズリ………。

あなたを、この世界に縛りつけて………。」

母は泣きながら、抱きしめてくれた。


「もう何も心配いらない。

私と母さんのもとへ………。」


父はそう言って、髪を撫でてくれる。


………だけど。


「私は………、ナポレオンを愛してるの。

だからお願い、彼の世界へ帰る方法を教えて」

そう呟くと、二人は哀しそうにおもてを歪めた。


「でも………、私達に会えるのは今この時だけなのよ?」


「もう痛い思いも哀しい想いもしなくなるんだぞ?」


「それでも………、私は戻りたい」

二人のおもてをまっすぐ見つめて、告げた。


「お父さん、お母さん………。ごめんなさい」

記憶の彼方の二人と同じように、優しく微笑んでくれた。


「おばあちゃんの首飾りは持ってるわね?」


「うん、」


「その首飾りを握りしめて、願うといい。

おまえの望む世界へ往きたいと」


「ありがとう………!」


微笑った彼女を、二人は優しく見つめた。


「あなたの未来が 幸福に染まるように願っているわ」


「どうか………元気でな、アズリ」


二人は闇に吸い込まれるようにして、消えていった………。


「………っ、」


意識が覚醒し、彼女はがばりと起き上がった。


「首飾り………。」

すぐさま握りしめ、強く願った。



「どうか………、もう一度あの世界へ………。」


やがて、首飾りから白い光が弾けて………。

気がつくと、屋敷の私室に佇んでいた。


「ナポレオン………!」

靴の音を響かせ、彼を探しに行った………。




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