第16章 『片割れ』に焦がれて
ぱたり。身体に衝撃が走る。
起き上がると、そこは祖母の遺した家で………。
「そんな………。」
呆然と呟く声だけが 静まり返った部屋の中響く。
「本当に、元の世界に帰ってきたんだ………。」
呟くと、じわじわと哀しみが襲う。
寝台に倒れ込むと、泣きじゃくる。
「どうして………、どうして………!」
どんなに嘆いても、もうあの世界に往くことはできない。
分かっているからこそ、涙は頬を伝った。
ナポレオンは………、私を忘れるつもりなの?
彼の優しい笑顔。髪を撫でる指先。
触れ合った時の温もり。私の名前を呼ぶ声………。
思い出すだけで心震えるそのすべてが
他の女性に向けられるのだと思うと胸が切り裂かれそうだった。
戻れない日々に焦がれて、彼女は首飾りを握りしめる。
溢れる感情に身をゆだねて。