第1章 首飾り
「では………、私はこれで失礼します」
『セバスチャン』と名乗った燕尾服姿の青年は
慇懃に一礼をして部屋を出ていく。
「はぁ………。」
冷たく虚しい吐息。
自分の身体を抱きしめるように腕を掛け、思考を声に載せる。
「私……、これからどうなるだろう………。」
自分の掌を見下ろす。
瞳を窓の外へと巡らせると、ニヤニヤ嘲笑っているような三日月が浮かんでいた。
慌てて首を振る。
「考えるのはなし! もう寝てしまおうっ」
シーツを頭まですっぽり被り、『大丈夫だから』と説き伏せる。
けれど微睡みへと旅立つまで………、いやそれ以降も心はざわめいたままだった。