第13章 愛しさを殺して
カチャリ、と扉を開けて アズリを寝台へと寝かせる。
「じゃあ………、俺はもう行くね」
そう呟いて部屋を出ていこうとしたフィンセントの袖口を、彼女は軽く引いた。
「私が眠るまで、ここにいて………。」
華奢な身体は震えていて、あやすように髪を撫でた。
「わかった。………あなたが望むなら、ここにいるよ」
かろうじて引きちぎられそうな理性を保って、微笑む。
彼女をそっと倒すと、安心させるようにちいさな手を握る。
「フィンセント………。」
夢と現実世界の狭間に佇んでいるような、ふわふわとした口調で名を呼んだ。
「なあに?」
「ありがとう。………あなたが来てくれて、良かったよ」
ふわりと微笑んだ彼女は、そのまま微睡みへと旅立った………。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「眠った、ね………。」
さら、と眠る彼女の髪を撫でる。
「俺は、あなたが好きだ………。」
かき上げた髪。その額に口づけた。
「アズリ………、眠ったのか?」
カチャリ。扉が開いて、ナポレオンが姿を見せた。
「ナポレオン………、彼女が………」
そっと先刻の出来事を耳打ちすると、悔しさにおもてを歪めた。