第3章 ゲーム開始
「嫌ッ………セバスチャンッ! 離して!」
悲鳴のような………、彼女の声。
やがて執事に腕をつかまれたまま、アズリが部屋へと足を踏み入れる。
「アズリ、話は聞いていたね………?」
そんな彼女に笑んだ伯爵。
ぎりっ、と唇をかんで 彼に厳しい視線を向ける。
「あなたは………、
こうするために私を此処へ連れてきたの………?」
お願い………、否定して。
「あぁ、そうだよ。俺は………、最初からこのつもりだった」
その瞳に浮かんでいた言葉を、無惨に消し去って。
「っ………!」
瞬間、吐息を封じた。
怒り、軽蔑、………哀しみ。その瞳に映る感情。
激しく執事の手を振りほどき、彼女はつかつかと伯爵に歩み寄った。
ぱんっ、と乾いた音が響いて。彼女が、伯爵の頬を張ったのだ。
「私は………、あなたの人形じゃない!
あなたの思うままになんてしない!」
瞳に今にも零れんばかりの涙を溜めた彼女は、一息に告げた。
「アズリ、待ちなさい」
彼女はそのまま、廊下へと飛び出した。
溢れる感情に身を任せて。