第2章 夢幻の果てに
執事に連れられて、食料保管室へと足を踏み入れる。
「アズリ………。
こちらが『ルージュ』………、人間の血液です。
あぁでも、この小瓶の中身は安全なルートから仕入れているので御安心を」
セバスチャンは硝子の小瓶に入った紅い液体を示す。
「それとこちらが『ブラン』です」
今度は、白ワインのようにクリーム色の液体を示し呟いて。
「ルージュの代用品であり………、一時的に喉の乾きを抑えることができます。
ですが、あくまで『代用品』であることをお忘れなく」
「つまり………。
命をつなぎ止めるには、ルージュが不可欠という事ですか?」
「………ご名答」
アズリの問いに、彼は満足そうに微笑んだ。
「しばらくは、私が偉人の皆さんへのルージュの支給をしましょう。
あなたは………、そうですね。まずは皆さんの部屋のシーツの洗濯を」
「分かりました」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
シーツを取りに、各々の私室を回る。
「………君が伯爵の言っていた人間?」
冷たく見定めるような視線にすこしばかり戦きながらも、呟いて。
「は、はい。
モーツァルトさん……、ですよね」
「あぁ。これを持っていて」
彼はそう言って、外されたシーツを渡してくれた。
「はい、有難うございます」