第4章 片恋ワルツ【アーサーBD企画様参加SS】
「ようこそ。伯爵からあなたのことは伺っていますよ」
迎えてくれたのは、銀の髪の子爵。
彼と伯爵は古い付き合いで、柔らかな笑みを浮かべ握手をしてくれた。
「お招き有難うございます」
笑んでイサラが呟くと、子爵が切り出した。
「あなたに話があるのです………、ミス・イサラ」
「ごめんなさいアーサー、すこし………待っていて?」
彼女はすまなそうに微笑んで、彼に連れられていった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「………はぁ」
中庭へと出た彼は、そっとため息をついた。
彼女の肩を抱いて微笑む子爵に、否応なく胸が焼けくようで。
「馬鹿だよね………。
自分から避けていたくせに、俺だけを見ていてほしいって願っているなんて」
「あら、………アーサーじゃない!」
その声に顔を上げれば、酒場の売り子娘が佇んでいた。
彼女もまた、ドレスを纏っていたけれど。
(なんでだろう………。イサラを見た時ほど、心が動かない)