第1章 一夜の過ち
だんだん、意気消沈してきて
恥かしくなってきた。
仲間として
やり直しってこと?
まさか知り合いからやり直し?
がっかりしたよね、多分。
だって、
恋なんかまったく
始まりそうにないよ。
側から見たら
上司と、
ガミガミ
叱られている部下のようだ。
(帰りたい。もう帰りたい!)
居た堪れない。
それ以上言わないでほしい。
涙が溢れてしまう。
「…聞いてる?」
「え、ごめん!!?
聞いてなかった。
…あの!
カカシ、本当にごめんね。
嫌な思いさせて。
ここのお代払っておくから、
ゆっくり食べてよ。
あんな事、
絶対もうしないから、
忘れてください。おやすみ!」
そう言って
席を立って外に出た。
「は?…ちょっと!!」
「おい、待て!!」
大きい声で
びっくりして振り返った。
周りに人がいるのにこんなに取り乱したカカシを見たのは初めてだ。
「なあ、何で、
俺の話を聞かないわけ?
俺の気持ちはどうでもいいわけ?」
ズカズカ足音を立てて
近づいてくる。
私は思わず
ボロっと涙が溢れた。
「な、何でそんなに怒るのよ」
「が、
勝手に決めつけて
落ち込んでるからでしょ。
やり直ししようって言ったじゃない。」
「だって、私…」
「…お前、何、
あれは嘘なの?」
「違う、
嘘なんかじゃない!
好きじゃなきゃ、
あんな事絶対しないよ!」
全て言い切った後、
私はこの人の策略に
まんまとハマった事に
気がついた。
「ちゃんと言ってくれたね、
嬉しいよ、ありがとう。」
勝ち誇ったように
ニヤリと笑っている。
間抜けな私を
面白がっている口調だ。
「笑わないでよ…
こっちは真剣で…」
「ああ、悪い。
つい、可愛いくて…ふふっ」
(何がおかしいの?
わけがわからない!)
「ごめん忘れて。
もういいから!」
投げ捨てるように言い放ち
その場を離れようとした瞬間、
一気にビリビリと
殺気を感じた。
「そう言うことを言うのね、
お前は。」
少し低く
冷んやりした
言葉を私に向けた。
「来いよ。」
ぐいっと引っ張られて
瞬身の術で
カカシの家の玄関に
つれてこられた。