第5章 ◆君が居れば、何も要らない*信長、秀吉、家康*
「舞」
「なに?」
「俺を選んでくれて…ありがとう」
「家康……」
「いつもは言えないけど…毎日感謝してる」
俺が舞の肩に顎を乗せながら静かに言うと、舞はゆっくり振り返って俺を見た。
きらきら光る、黒い宝石みたいな瞳。
吸い込まれそうなくらい澄んでいて…
それは一切の曇りも感じられない。
「それは私の台詞だよ、家康」
「舞……」
「家康が私を選んでくれて、嬉しいよ」
「俺には最初からあんたしかいない」
「……っ、そっか」
今度は、若干頬を赤くさせる舞。
こんな可愛い妻が出来るなら…これからの毎日はどうなるんだろう。
起きる瞬間から一緒で、一緒に朝餉を食べたり、一緒に出かけたり、そして……
夜は、たっぷり甘やかして。
もう晴れて俺のものになるのだから。
子ども…とか出来るのもいいな。
幸せな想像が止まらない。
こんな自分こそ、昔の俺なら想像出来なかったのに。
舞と一緒なら。
それはきっと想像でなく現実になるから。
そんな幸せな家庭を築いていきたいと…
素直にそう思える。
「舞、顔赤いよ?」
「い、家康が変に素直に言うからっ……」
「へぇ…そう」
「そうやってたまに素直になるの、ずるい」
「ずるくない、少し黙って」
「んっ……」
そのまま顎を掬い、柔い唇をやんわり塞いだ。
甘いなぁ…そう感じるがままに、濡れた唇を割って。
舌を誘い出して絡み合えば、一気に深くなった。
吐息も奪うように、奥底まで貪る。
だんだん蕩けだす舞が愛しくて、つい口づけている間も表情を堪能してしまう。
────俺の、可愛い奥さん
これから一生、どうぞ宜しく。
たまに寄り道したり、喧嘩もしたりして。
それでも、一緒に寄り添いながら……
一本の道を歩いていこう。
その一瞬一瞬は宝物だ。
それが、永遠に続くことはない。
それでも……
せめて一緒に居る時間だけは
永遠を感じたいと。
この想いは未来に続いていくのだと
そう願わずにはいられない。