第2章 君との✕✕は甘く切なく*信長、光秀、家康*
《君との✕✕は甘く切なく 信長ver.》
「────今宵も俺の勝ちだな、舞」
パチンと俺が碁石を置く小気味良い音が鳴り、今宵の囲碁勝負も決着がつく。
碁盤の上が真っ黒になっているのを見て……
向かいに座った舞が小さくふぅっとため息をついたのが聞こえた。
「負けました……」
「では…今宵は貴様のどこを奪うとするか」
「……っっ」
俺がそう言った途端、舞が身体を固くする。
それを見てニヤリと笑いながら、俺は手招きをして、舞を傍に座らせた。
────舞と戯れに始まった、天主での囲碁勝負
一度でも俺に勝てたら、三月後に訪れる『たいむすりっぷ』の機に、舞を京へ連れて行ってやると約束した。
しかし、俺が勝ったなら……
勝つ度に、舞の身体の一部を奪うと。
それを承知の上で、舞と幾度か囲碁勝負をした。
今まで、右手、耳、脚と奪い……
今宵はどこを俺のものにするか、俺は端からそれは決まっていた。
「今宵は……これを奪うとしよう」
隣に座った舞の顎を、指で掬う。
そして、親指の腹でそっと舞の唇をなぞった。
瞬間、舞がこくっと喉を鳴らす。
それは、欲して望んでいるからなのか。
見つめてくる舞の黒曜石の瞳は、戸惑いと期待が入り交じっているような、そんな眼差しをしていた。
「だ、だめですっ……!」
「敗者が勝者に口答えをするな。俺は決定事項しか言わん」
「で、でも唇なんて……!」
「早く塞いでしまった方が得策と見える」
俺は逆の手で舞の腰を、ぐいっと引き寄せると。
口答えばかりする、その桜色の唇を、次の言葉を紡ぐ前に己の唇で塞いだ。
「んっ……!」
舞が小さく息を漏らす。
半開きになっている唇から舌をねじ込み、舞の逃げる舌先を絡めとった。
舞の身体が強ばっているので、それを解すように身体を撫でながら、口内を攻め。
思考まで蕩かすように、舞の唇を味わう。
天主には、絡み合う儚い水音が響き……
次第に舞は表情まで蕩けさせ、とろんと瞳を曇らせた。