第10章 新しい筆のおろし方03 /口づけの意味04
葵の呼吸が整った頃
「どうする?もっと先に進む?」
と声をかけると
「いえ…これまで通りで、、お願いしたいです」
顔を真っ赤にして首を横に振りながら訴えかける姿がかわいい
「そう、残念だね」
ホッと嘆息した葵に
「じゃもう一度するよ」
「えっ」
「あんたが少し待ってっていったから、一旦止めたんだよ、再開するでしょ」
「そ、んな」
顔を近づけると、葵があわてて目を閉じる
が、そっと離れると気が付いて
不思議そうに開いた目と合う
「今度は葵からしてみて」
「えっ」
「ちゃんと学んだなら、やってみないと覚えられない」
「っそうだけど…」
これ以上ないというほど顔を真っ赤にして逡巡している様子を静かに見下ろしていると
「めを、、、て、、」
「ん?」
「目をつぶって…ほ、しい」
ゆっくりと瞼をおろす
震える葵の手が頬に添えられ
一瞬だけ唇に柔かいものが触れる
目を開けると
頬に手を添えたまま、恥ずかしそうに俯く葵が目に入る
頬の手に自分の手をそえ、
ちゅっと音を立てて葵の掌に口づけをすると
バッと顔をあげ逃げようとする
葵のうなじを引き寄せて
口付ける
「んっんんっ」
何度も何度も深く浅く口づけていく
くたっと家康に身体を預ける
葵をやさしく抱きしめ頭を撫でてやる
葵には知識も経験も必要ない
男は惑わされ、その身を貪りたくなる
女を抱いたことのない男も、抱いたことのある男も
最初から分かっていた、多分葵は経験がない。
そんな葵に、伽の方法を教えるなんて、後ろめたさを感じるものの、誰かがいずれ触れるならそれは自分でありたい。
誰にも譲れない。
甘やかせて甘やかせて、自分しか見えないように
自分の腕の中でしが眠れないように
城にだって返さない
俺だけのものになって
口づけの意味(手の平):懇願
続
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