第10章 新しい筆のおろし方03 /口づけの意味04
家康は何も言わずに次の言葉を待ってくれている
「家康はすごくもてるって」
「は?それとこれになんの関係あるの?」
「大切な人がいるのに私にこんなことを教えてて、関係が悪くなったりしちゃったら申し訳ないって思ったの」
上から大きなため息が聞こえ
顎に添えられたままだった指が、こちらを見ろと言わんばかりに軽く頬を叩く
それに気が付きながらも、目線を彷徨わせていると
ふいに指が撫でるよう唇の上を行き来する
思わず目線をあわせると、強い目線に捉えられ外せなくなる
「葵の目には、俺がそういう人がいるのに他の女にこんなことするような男にみえてるの?」
「あっごめんなさい。そんなことない。ただ、他の女性のところに行きたいのに無理に我慢をさせてしまってないかって」
「俺は嫌ならやらないし、我慢もしない」
「…うん」
「あんたは余計なこと考えすぎ」
「ごめんなさい」
「しかも教えを乞う側がもっと早く教えろって失礼極まりないね」
「ご、ごめんなさい」
申し訳なくて目線を彷徨わせてしまう
「でも、ご要望にお応えして進めてあげるよ」
「えっ」
彷徨わせていた目線を戻すと、悪戯を思いついたような家康の顔があった