第8章 新しい筆のおろし方01 /口づけの意味03
「じゃ、さっきの件だけど長くなりそうだから、
先に書簡を整理してしまっていい?
話をするのは夕餉のあとにしよう」
「じゃあ、繕い物をしているから、ここにいていい?一緒にいれば、お茶入れたり何か手伝えるでしょ?」
「別にいいけど」
それから数刻の間、
書簡を読み筆を進める音と衣擦れの音だけが聴こえていた
ふと書簡から目をあげて葵を見ると、うたた寝をしているようだ。
口元をゆるめ、文机をもって立ち上がると葵の隣に座る。
手元から繕い物をとりあげ、自分に寄りかかる様に誘導する
葵の髪に唇をよせ、口づけた
支えていた腕を離すとつぅっと頭が滑り落ち
胡坐をかいている足の上に納まった。
羽織を脱ぎ葵にかけやりながら、
足の上に納まった頭を愛しそうにしばらく撫でていたが満足すると書簡に戻っていった
指先への口づけ:思慕
01終
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