第8章 新しい筆のおろし方01 /口づけの意味03
「家康、明日葵を連れてこい」
突然天守に呼ばれ…これだよ…
「またですか?」
「文句でもあるのか?」
自分でも不機嫌な顔をしていると分かる
「ありますよ。あの子を呼ぶときは大体ろくなことがない」
「ふっそうかもしれぬな」
「は?」
「心配なら明日一緒に天守にくればよい。お前は葵の護衛でもあり後見人だからな。一緒に話を聞かせてやろう」
「はぁ」
あの子を城に連れてくるのは好きじゃない。
色んな男に声をかけられ、世話を焼かれているのを見ると嫌な気持ちになる。
男たちに囲まれているあの子をみるとそこから引き離したい衝動に駆られる。
御殿に隠しておきたい。
声をかけるのも、世話を焼くのも俺だけでいい。
翌日
「じゃ家康、私は天守に行ってくるね」
城についてすぐ、一人で天守に向かおうとする葵を引き留める
「俺も行くから」
「えっ大丈夫だよ。お城の中は安全なんだから」
「いや…」
そういうことじゃなくて…
と言おうとしたところに声がかかる
「家康様、こちらの件少し宜しいですか?」
側近から急ぎの話を振られ足を止める
「ほら、家康も忙しいんだから、ね?」
首を傾げられ、『分かった』と頷かざる得ない
「でも、終わったらすぐ行くから。意味の分からない事、無理難題はそこで返事しないように」
「もう心配性なんだから、わかってるって」
いっていくるね~と軽やかな足取りを見送り嘆息する
あんたの分かってるが一番心配なんだよ