第8章 lumière douce【降谷零】
「髪とか目の色が違っても、みんな血の色は一緒なんだ」
「赤い色?」
「そう、俺が小さい頃喧嘩して泣いてると、そう言って手当してくれる人がいたんだ。……君は変なんかじゃないよ。今度変だなんて言う奴がいたら血の色は一緒だって言い返してやれ。」
「うん!……あ、私もう帰らなきゃ!」
遠くから聞こえたチャイムの音に少女が飛び上がって駆けてゆく。
「一人で帰れるか?痛くない?」
「痛いけど大丈夫!帰れるよ!お兄ちゃんありがとう!!」
「もう怪我するなよ!」
「うん!しなーい!」
少しずつ開く距離の中、降谷少年は心配そうに声をかけて、少女は歌うように返事を返す。やがて少年は元気だなぁなんて呆れながら、それでも静かに笑い、願う。
出来ればあの子が怪我をしませんように。
ずっと笑えていますように、と。
fin.