第9章 体育祭
パン、とピストルの音が響き渡りレースが始まった。
男子の選抜というだけあり、みんな速い人ばかりで興奮する。
第一走者から第二走者にバトンが渡されていく。
「え、あの2人背高すぎない!?」
「どれどれ?…紫原くんと緑間くんだ!」
青と白のハチマキをした2人が並んで走っていく。
身長の高さからは想像出来ないほど速い。
2人が並んだままバトンは第三走者に渡された。
青団が白団に遅れをとり、白団、青団、赤団の順に走っている。
「あ!アンカー黄瀬くんと…青峰くんだよ!」
「うん、しかもすごい良い勝負…!」
アンカーにバトンを渡した時点では青団と白団は互角。
青団としては黄瀬に頑張って欲しいところだけど…。
その時、私の目の前を大輝が走り抜けた。
私をちらっと見た大輝と一瞬だけ合った目。
その瞬間、黄瀬のことなんてもう頭に無くて。
遠くなっていく大輝の背中に、無意識に精一杯の声援をかけていた。
「大輝ー!!いっけー!!」
背中に瑠衣の声援を感じた。
ったく…お前にそんな応援されといて勝てなかったら、カッコ悪すぎんだろ。
腕を振り上げ、足を動かし、前にいる黄瀬に迫る。
少しずつ距離を詰めていき、あともう少し…。
「…ッハ…ハッ…」
はっ…まさか体育祭ごときでこんな全力で走ることになるとは思わなかったぜ。
一気に黄瀬を追い抜いた。
抜いた瞬間に見た黄瀬の顔は
やけに清々しい顔をしていて、
俺に勝てなかったのに何でそんな顔してんだよ?
気づいた時には、ゴールテープを切っていた。