第5章 透明少年と本
今日は2月14日、バレンタインデー。
日本中の恋人達が色めき立つ日だ。
といっても、私は友チョコを作るだけなんだけどね笑
密かな本命チョコは…正直渡せる気がしないから。
「おぉっ、雪だあっ…」
ドアを開けて玄関から一歩外に出ると、一面雪景色だった。
雪はこの間降ったばかりだけど、何度見ても感動しちゃう…!
夕方頃には大雪になってそう!
とは言っても、やっぱり外は寒くて、
「さむっ…!」
私はマフラーをぐるぐる巻きにして、手袋をした手でチョコの入った紙袋を握り締めた。
「おはよー瑠衣!はいっ、ハッピーバレンタイン!」
「ありがとー!私も真雪に!」
教室に入って一番に真雪と友チョコを交換する。
他にもクラスの子たち数人とチョコを交換していき、紙袋がチョコで埋まっていく。
今年も豊作♪
真雪はガトーショコラ、私はチョコクッキーを作った。
お昼に一緒に食べようねと約束して、私はチョコを配るために教室を出た。
「さつきー!」
「あっ瑠衣!おはよー!」
私が声をかけた途端、満面の笑みで紙袋を持って駆けてくる。
この純粋な天使は、まわりの男子の異常なソワソワ振りを多分知らない。
「はいっチョコ!」
「……さつき、これはその…」
「ん?」
そんなに可愛く首傾げられたら、「手作りなの?」なんて聞けない…!
「ううん、何でもない。ありがと!」
「こちらこそ!」
少々こわばった笑顔でさつきに手を振って別れた。
…このチョコどうしよう。