第15章 帝光祭
「じゃあ黄瀬はどんな格好してるの?」
「黄瀬ちんは普通に男物。サイズあったんだって~」
「ふーん」
ちょっと残念…。
黄瀬の女装はイケると思ったんだけどなぁ。
「瑠衣ー。あ、むっ…え!?どうしたのそれ!?」
「サイズなくてー」
「ああ…」
紫原くんの一言で全てを悟ったらしく、真雪は哀れむような目をした。
「そうだ、瑠衣。ゴミ捨てて来てくれる?」
「え、パシり!?」
「いやアンタ雑用係じゃん」
「……いってきまーす」
雑用係とは私の文化祭においての役職である。
別になりたくてなったんじゃないし!
余ったのでいいやと思ってたら雑用係しか残ってなかったんだよ!
雑用係とかネーミング最悪だ、と拗ねながら焼却炉にゴミを持って行く。
他のクラスの物と思われるゴミが集まっている所にゴミを置き、さあ戻ろうとした時、焼却炉の裏から声が聞こえた。
「私と付き合って下さい…!」
「…ごめん。好きな子いるから」
突然聞こえた告白に顔が熱くなった瞬間、聞こえてきた男子の声に、熱が一気にひいた。
まずい。
早く離れなきゃ。
そう思っていても体が全く言うことを聞かない。
足跡が近づき、その姿が現れた瞬間、私は咄嗟に下を向いた。
「あ、久瀬じゃん」
しかしその行動は意味を成さず、呆気なくバレてしまった。
そこには菅原漣がいた。
これはもう、逃げられないぞ。
「…………どうも…」
「愛想無いなぁ。青峰たちといる時はもっと楽しそうじゃん」
貴方と会って楽しいわけ無いでしょう。
口から飛び出そうになったが、必死で抑えた。
冷静に。
「…私、早く戻らないといけないから」
菅原くんに背を向け、早歩きで立ち去ろうとする。
けれどそんな簡単には逃がしてくれず、彼は私の前に回り込んできた。
「もう少しいろよ。いつもアイツらと一緒にいるから話しかけられなくってさ」
「…嫌だ。退いてよ」
「また逃げんのか?」
責めるような声を聞いているうちに、段々昔の記憶が蘇ってきた。
私の中の一番奥に閉まったモノが出てこようとしている。
怖い。
私はまだ、この人が怖い…!
「やめて!!」
叫んだ次の瞬間、頭の上に大きな温もりを感じ後ろに引き寄せられた。