第10章 打ち上げ
~黄瀬side~
夜になり辺りがすっかり暗くなった頃、打ち上げがお開きになった。
同じ方向に帰る同士で固まって帰るノリになり、瑠衣っちは幼馴染み2人と帰るんだろうな、と思いきや1人で帰ろうとしていた。
慌てて呼び止めて、2人はどうしたと聞く。
どうやら、青峰っちはいつの間にか消えていて、桃っちは黒子っちと一緒に帰ることになったらしい。
必然的に帰り道が1人になってしまう瑠衣っちを、俺が送ることになった。
「あ~楽しかった!私、打ち上げなんて初めてやった!」
「去年のクラスとかでやんなかったんスか?」
「うん、そういうのするほど仲良くなかったの。でも初めての打ち上げがバスケ部のみんなとで良かった」
そう言って心底楽しそうに笑う瑠衣っちに、俺もつられて笑う。
…瑠衣っちの特別な人にはなれなくても、これはこれで居心地がいいかもしれない。
2人で夜道を歩いて家まで送って、他愛も無い話をして、別れ際のキスなんてなくて。
この関係ならずっと、大人になっても一緒にいれる。
楽しそうに笑う瑠衣っちを見守れて、いい立場じゃないっスか…。
その時、
瑠衣っちが急に動きを止めた。
「瑠衣っち?どうしたんスか」
そう問いかけても返事がない。
一点を見つめて動かない瑠衣っちの視線の先を見ると、1人の男がいた。
すると男が俺たちの視線に気づき、こちらを向く。
目を細めて睨むように見た次の瞬間、今度は目を大きくした。
その視線の先には瑠衣っちがいた。
「久瀬……?」