第1章 記憶喪失
動揺を隠せないのは、
前回任務を共にした感じと
少し違うからだ。
あの任務から
まだ1週間しか経っていないはずなのに、何か感じが違う。それが何かと言われればよく分からない。
とにかくもう
勘ぐりをしないで
帰ってほしい。
「ねぇ、」
「……っ!!」
付き合っていた頃のカカシが一瞬にしてフラッシュバックした。
久しぶりに呼ばれて
声を失って、思わず、目から
涙を零してしまった。
何で 今名前を呼ぶの?
「えっ…??何で泣くわけ?
て
呼んだ方がしっくりするね。
これからそう呼んでいい?」
「無理、でお願い。」
間髪を入れずに
早口で答えた。
今はただ、バレたくなかった。
カカシの反応が酷かったら?
気持ち悪がられたら?
いきなり、あなたは私の彼氏ですって言われたら、気持ち悪いって思うはずだ、絶対。
「うーん、どうして?
あ、じゃあ、
カカシって呼んでみてよ?」
「…は?」
「前の任務の時、
敵とやりやってるとき、
カカシって呼んだでしょ?
あと、俺もお前の事、
って言っちゃってたし。」
「あれは、…あのときは咄嗟に出ただけで深い意味はないから。」
「……まあ、何でもいいや。俺がもう一回聞きたいだけ、ほら、早く言ってよ。」
…何故そんなに名前に拘るのか分からない。
従えば帰ってくれるのか?
記憶がないのだから、
気持ちもないはずだ。