第1章 記憶喪失
今日はよく雨が降っている。
梅雨入りしたと昨夜ニュースで流れていた
ザーッっという音が響いて
五月蝿くて目が覚めてしまった。
今日と明日は
せっかくの休みなのだから、
のんびり寝ていたかった。
外の雨を窓から
恨めしく思いながら
布団から出て、
朝ごはんの準備をしているが、ボーっとして
やる気が湧かない。
カカシは2週間ぐらいで
退院した。
本当は毎日でも、
お見舞いに行きたかったが、
2回ぐらいしか行かなかった。
任務がいつもより
激務だったこともあるが、
一番の理由は、
私を忘れている彼を
見たくなかっただけだ。
なんて
薄情な女なのだろう、
と私は自嘲した。
彼の反応が恐くて、
本人には何も言わず、
淡々と仲間として
接したのは、
単に自分が
傷つきたくなかったからだ。
食パンを頰張りながら
私は暖かいコーヒーが入った
コップを見つめた。
これはカカシと
お揃いで買ったコップだ。
お揃いとか、
あまり好きではない
カカシに無理を言って
お互いの家に
ワンセットずつ置いていた物だ。
彼にとって、これは、私を思い出すアイテムではないと思うとさらに虚しくなった。