第3章 【番外編】マツノトクエスト 第二章
「あ~、そこの……名はぁ、なんと申す?」
「ナス子です。いずれこの国の大魔法使いになって爆裂魔法ぶっ放します」
名を聞かれ、心の中にあった野心がつい口を滑らせる。
「爆裂魔法とな? それはそれはぁ、ほっほっほっほ、粋がいいのぉ! ぐほぉ、ほほほほっ」
村長だけでなく周りの村人までもが笑い出すと、まずは爆裂魔法を覚えた暁にはこの村からぶっ放してやろうかと心に決めた。
「で、ナス子とやら。こちらの伝説の噴水に手を入れてみてはくれんかの?」
伝説の噴水とは?!
まさかこの中に手を入れて何かしらの反応があったらやっぱり勇者はソナタじゃ!!とか言われるパターン?
「入れる! 入れる、めっちゃ入れるぅ!! おりゃーっ」
「うぉっ、おい! 水飛ぶからやめろってぇ」
嬉々として噴水に両手を突っ込むといきなり視界が眩しくなり、噴水の水が黄金色に輝く。
私は目を見開いたのだが、その発光はきっと何かが起こるに違いないと期待に胸を膨らませる。
村長や村人が唖然とした後、急にワっと歓声を上げて全員の視線が私に集まった。
そのままワナワナと身体を震わせた老人村長が両手を空に掲げ叫ぶ。
「…………や、やはりか!! 勇者よっ」
「はいっ!! 私勇者ですか?!」
「いや、違う。 勇者はそっちのニート勇者おそ松」
勇者とか言うから期待して振り向いたのに、どうやら私ではなくおそ松に向き直っただけらしい。
チっ……。
では一体この発光はなんだったのかと不思議になる。
「勇者おそ松よ、これは伝説の仲間の一人であるぞ……、空から降ってきたと聞いてもしやと思ったが、見た目年齢的に乙女ではなさそうじゃったからの……アイテムかと思うておったが、どうやらお前の待っていた聖なる乙女だったらしいな」
━━━━━━━━━━は?
聖なる乙女? 何それ、恰好いいんですけど。
でも年齢的にとか余計だよね、この人。
いくらゲームの中だと言えどここまでムカツク言い回しまで出来るのか!
さすが新感覚ゲーム、やっぱりハリセンでブチ殴りたい。
寧ろアンタのそのピカピカつるっぱげ頭を撫でくり回して聖なる光でも輝かせてやろうかと言う気分になる。