第11章 優しさと嫉妬のオレンジ色
「ねー、クロエ」
「何?」
「ちょっと顔上げてくんない?」
そう言われて顔を上げると、そこには眼鏡を取り、優しい表情をしたロナルドがいた。
ロナルドは私の頰を優しく撫でる。
目を細めて愛おしそうに私を見るロナルドが、私にとっては愛おしくてたまらなかった。
「もうちょっと、こっちおいで」
ロナルドに顔を近付けた。すると彼は、私の頰に優しく手を乗せたまま、唇に一つキスを落とした。
また心臓が飛び跳ねた。心なしか、呼吸も速くなっていた。
この感覚。あまり認めたくはなかったが、昨夜、ウィリアムに薬を飲まされたときに感じたものに近いような気がした。
たまらなくなった私は、自分から勢いよくロナルドにキスをした。
「おっと、どした?」
私は答えず、またキスをする。
少し口を開けると、ロナルドの舌が入ってきた。
私はそれに応じた。ロナルドは私の頭を軽く抑え、優しくも激しいキスを続けた。
もっともっと。私の体はロナルドを求めていた。
しかし、しばらくキスをした後ロナルドは私の肩を持ち、下を向いて言った。
「マジで、これ以上はヤバイから」
ロナルドの呼吸も速くなっていた。
「……もっとしたいけど、クロエを傷付けるワケにはいかない」
「傷……?」
「いや、傷付けるっつーか、その……」
ロナルドはまた私の頰を撫でた。
「クロエは純粋だから、汚しちゃいけないってこと」
「私が純粋……?」
私の頰にあるロナルドの手の上に、自分の手を乗せた。
「私はもう、別に純粋とか、そういうんじゃないよ」
ロナルドは黙って私を見ていた。
「私が無知だから、赤い死神にも笑われたし……あの、管理課の人にも……」
「クロエ」
「でも、私は……経緯がどうであれ、知っちゃったの」
上半身を起こした。
それに続いてロナルドも同じように起き上がり、眼鏡を掛けた。
私はロナルドの方を向いて言った。
「……私ね、ロナルドのこと、もっと知りたいって思ってるんだよ」
「……うん」
「ロナルドは……そう、思ってないかも知れないけれど」
それを聞くと、ロナルドは私の頭を両手で持ち、何度も撫でた。
「思ってないワケないだろ」
切なそうに、だけど先程よりも愛のこもった表情を浮かべていた。私はそんなロナルドが、より一層愛おしくなった。