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【黒執事】スノードロップ【死神・裏】

第10章 哀色からの脱却


突然ふと目を覚ました。
どこかから音が聞こえた気がしたのだ。
その音が扉の方から聞こえていることに気付いた私は、反射的にベッドの端で膝を抱えた。
眠る前の出来事を思い出す。
あのときは、何か変だった。
意識とはまた違った部分でウィリアムを求めてしまっていた。
そのことを含めて、全てが恐ろしく感じた。
また、彼が入ってくるのかも知れない。
そう思い体が震えていた。
しばらくして、ついに解錠される音が聞こえた。
扉の向こうから、こそこそと人の話し声がする。
ゆっくりと扉が開いた。誰かが入って来たようだ。
膝に顔を付け、膝を抱える腕に力を入れた。
入ってきた人物が私の肩に触れた。

「クロエ!」

小さめの声で、力強く私の名前を呼ぶ声。
何度も力をもらった、高めのこの声は。

「……エマ……?」

私は顔を上げて、彼女の名前を呼んだ。
目の前に彼女の哀しげな表情が見える。
エマは、私を力一杯抱きしめた。
そして、彼女の肩越しに見える扉のすぐ近くに、一人のシルエットがあった。
それを見た瞬間、私の目から涙が溢れ出た。
そんな私の頭を、エマは何度も撫でた。
彼は部屋へ入るのを躊躇していたようだったが、私の様子を悟り、駆け寄って来てくれた。
私の目は溢れ出る涙でいっぱいで、彼の姿も顔も歪んでいたが、間違いなく、一番傍にいて欲しい人だった。
彼はエマに代わり、私を強く強く抱きしめた。

「クロエ……! ごめん、本当にごめん」
「ロナルド……ロナルド! 会いたかった……」

ロナルドの着ているジャケットが、私の涙で濡れてしまった。
しかしそんな事には構わず、私達は抱きしめ合った。

「一度、良いかしら。クロエにこれを着せてあげないと」

エマに、脱ぎっぱなしにしていたブラウスを着せてもらった。

「……酷いわね。こんな格好のままでいさせるなんて」

私は二人に連れられ、部屋を後にした。
どうやら今は深夜のようだ。
たった二日程度しか経っていないはずなのに、物凄く長い時間をあの部屋で過ごした気がしていた。
渡り廊下のような、薄暗くなっている所を進んで行った先にある部屋の前で立ち止まった。
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