第9章 青い霧
--回収課のサトクリフ先輩、連れ戻されたらしいよ。
--マジ? 結局どこで何してたの?
--よく知らない。でも色々とルール破ったみたい。多分しばらく現場出られないね。
--うわぁ。
--あと! もう一つニュース!
--何?
--ノックス先輩も久し振りに帰って来たんだって。
--そうなの!? 良かった〜。今度の合コンは絶対にノックスさん連れて来てって頼まれてるんだよね。
--あぁ、でも……それは無理っぽい。
--え、なんで!?
--彼の様子を見ればわかると思う。
--どういう意味?
--なんて言うのかな、ものすご〜く話しかけ難い雰囲気っていうか。
--あのノックスさんが? あり得ない。
--だよね。本当、何があったんだろうね。
後になって私がエマから聞いた話では、一部の女性死神達の間で、グレルとロナルドについて様々な噂が飛び交っていたらしい。
グレルについては、皆、概ね検討がついていたそうだが、ロナルドに関しては、ほとんどの死神が真相を知ることは無かったという。
常に先輩にも後輩にも、分け隔てなく明るく接していた彼が、久々に姿を現したと思ったら他人を寄せ付けない雰囲気を醸し出していたとなれば、噂にならないはずもないだろう。
私がウィリアムからの取調べを受けている頃、ロナルドは始末書の作成や簡単な聴取こそあったものの、重大な規定違反を犯した訳ではないということで、通常通り職務を遂行していたようだ。
ロナルドには、私がどのような状況に置かれているかの説明は無かったらしい。
ただ、取調べが必要だからしばらくの間会わせることは出来ない、とだけ聞かされていたという。
「そっちも色々と大変だっただろ。ごめんな」
「いいえ、ワタシは何も言われてないわ。こちらこそ、もっとちゃんとした経緯を踏むべきだったわね」
「……そっか」
ロナルドはうなだれていた。
「クロエのことが気になるのね」
「……今頃どんな目に遭わされてるのやら」
「んん……」
「……あー……ヤベェ」
下を向いて頭を抑える。