第8章 赤と黒
私は死神三人と狭い路地にいた。イーストエンドの路地は非常に暗く、不気味だ。
「さて。先程の続きですが」
ウィリアムは引きずっていたグレルを棄てるように離した。
「まず、クロエさんの正体から聞きましょうか」
「それ聞いてどうするんスか」
「聞いてから決めます。さぁ、これ以上私の手を煩わせないで下さい」
ウィリアムの目はとても冷たかった。
「……私は」
「クロエ」
ロナルドが私の発言を止めた。
「ロナルド・ノックス。私の手を煩わせるなと、何度も言わせないで頂きたい」
「俺はこいつを守ると決めたんです。どんな処分を下されるかわからないこの状況で、詳細を明かすことは出来ない」
「まったく。いつから死神は人間のパートナーを付けるようになったのですか」
「さぁね。スピアーズ先輩にもそのうち出来るんじゃないですか?」
何故かウィリアムは、むっとした表情をした。
「馬鹿なことを言っていないで、さっさと吐きなさい」
「だから嫌だって言ってるじゃないっスか」
「ならば、やはり力尽くで本人から聞き出すしかないですね」
ウィリアムは伸縮式のデスサイズをこちらへ向かって勢いよく伸ばしてきた。
それにロナルドは、自身のデスサイズで対応する。
「スピアーズ先輩にしては、随分荒いやり方じゃないっスか」
「手段は選ばないと言ったはずです」
私はもう、ロナルドが戦う姿を見たくなかった。
両手で顔を覆い俯いた。
「あーら。ロナルドはアンタの為に戦ってるのよ。アタシのときだってそうだったじゃない」
地面に寝転がったままくつろぎ始めていたグレルに声を掛けられた。
「アタシもウィルに、あんな風に戦ってもらいたいわ」
「……こんなの、嫌だ」
「アンタ、あのロナルドをどうヤってここまで手懐けたのよ」
「何もしてない」
「ウソ! そんなはずないわ。今後の為に教えて欲しいの。ねぇ、彼とどこまでシたのよ?」
顔を覆っていた手を離し、勢いよくグレルの方を向いた。
「あらヤダ。もしかして、最後まで……!? 禁忌を犯しちゃったの!? いやーん!!」
グレルは上半身を起こし、座った状態で体をくねくねさせていた。
私は、グレルの言っている意味がいまいち理解出来ず、固まっていた。