第1章 出逢い
私を自力で立たせたロナルドは、私の目を覆っていたネクタイを外した。
再び目の前に現れたロナルドの顔を見た私は、急に怒りとも悲しみとも言えない感情が湧いてくるのを感じた。
呑気にネクタイを締め直している姿が、湧いてくる感情を増幅させる。
「ちょっと……! 何なんですか!! ちゃんと教えてくれずに突然こんな……」
言葉の途中で涙が溢れてきた。
「もう、本当に、怖かったんだから……! ついてきたの間違いだったかなって……」
「あーごめんごめん!! 強引なことしちゃったのはマジで謝る!」
「本当に謝る気ありますか!!」
「あるある! あるって!! ……だけど、こうでもしないとここには辿り着けなかったんだよ」
手で涙を拭い、ロナルドの視線の先へ目をやると、そこにあるのは大きな建物だった。
建物自体は無機質で、冷たい印象を受けた。
実際この辺りの空気は、どこかひんやりしているように感じる。
冬ならではの冷たさとは違った、不思議なものだ。
「ここは……?」
「ここは俺の仕事の本部であり、自宅だよ」
「自宅……? 家ですか?」
「そうそう」
「職場と一体化してるんですか」
「スペースはちゃんと分けられてるよ。プライベートタイムに仕事の話なんて、たまったもんじゃないからね」
ここからは少し静かにしているよう言われ、ロナルドの後をついて行くと、建物の裏の方へ出た。
「ちょっとここで待っててくれる? 時間も丁度良いっぽいし、すぐ戻るから」
そう言うロナルドの背を目に、近くにあったベンチへと腰掛けた。