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【黒執事】スノードロップ【死神・裏】

第7章 存在価値と愛


そして、ロナルドもまた、私に関わった者として目を付けられていると言う。
ずっとこんな日が続けばいい。
いつだったか、ロナルドの呟いた言葉が心に残っていた。



「前に、被害者の共通点の話したの覚えてる?」

宿の部屋で、ロナルドが話を切り出した。

「うん。手術と、ショーフ……だっけ?」
「あ、うん。そう。娼婦ね」
「うんうん」
「手術は全部、同じ医者が執刀したらしいよ。あの、サトクリフ先輩が仕えてた女」
「マダム・レッド……。あの人、お医者さんだったんだ」
「理由は俺にはよくわからないけど、自分が手術した娼婦を次々に殺害しているらしい。死神の手を借りてね」

グレルとマダムに遭遇したあの日のことを思い出す。

「その情報に行き着いて、ちょっとその病院を調べてみた」
「マダムが勤めてる病院?」
「そう。ロンドン王立病院ってとこ」

聞き覚えのある病院の名だった。
確か、ローズ伯母さんが中絶手術を受けたのがその病院だ。

「あの女が執刀した患者の中に、一人だけまだ生きている奴がいる」
「……それって!」

ローズ伯母さんのことだと思った。だが、ロナルドの言葉がそれを否定した。

「いや、実は王立病院の患者名簿に、ローズ・ニコルズの名前はなかったんだ」
「……え?」
「ローズ伯母さんとあの女医には、接点が見当たらなかったんだよ」

私の頭の中に、無数のクエスチョンマークが飛び交った。

「しかも被害者は決まって娼婦ばかりで、今のところ例外はない」
「待って。ってことは、ローズ伯母さんは中絶手術を違う病院で受けたってこと……?」

ロナルドは腕を組んだ。

「仕事の合間を縫って、少しだけローズ伯母さんについても調べてたんだけど」

私の知らないところで、実はロナルドが動いてくれていたことへの嬉しさと、申し訳なさが入り混じった。

「伯母さんの中絶手術の記録は、見つかってないんだよ」
「……どういうこと」
「全国の病院を調べたって訳じゃないんだけど、あり得そうな所は一通り調べ上げたんだ。けど、そもそも伯母さんが婦人科を利用したっていう形跡自体がない」

この世界には幼い“私”の存在がなく、この私が経験した過去とは明らかに何かが違っている。
ローズ伯母さんが不倫相手との子を妊娠しなかったのか、そもそも不倫をしていないのか。
可能性としてはどちらもあり得ることだった。
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