第6章 真実への扉
「……うん。本当に、ごめんなさい」
「どうしてクロエが謝るんだよ」
「だって私、ロナルドに迷惑掛けてる……エマにも」
ロナルドは眉をひそめて私を見ていた。
「だから……本当に、これまで色々と、ありがとうございました」
頭を下げた。
我慢していた涙がこぼれ落ちた。
そのままの体勢でいると、突然伸びてきたロナルドの手に顎をつかまれ、強制的に顔を上げさせられた。
彼は怒ったような表情をしている。
「どういう意味?」
「……これ以上迷惑を掛けるくらいなら、一人になった方が良い」
「それ、マジで言ってんの?」
「だってこのままじゃ私のせいでロナルドまで追われる身になっちゃう」
「じゃあお前は死神の手からずっと一人で逃げ続けるって言うのか?」
「そうするしかない」
「無理に決まってんだろ」
「だったら、私は自分で死んだ方が良」
「そんなことさせるワケねぇだろ!!」
ロナルドが声を上げた。
周りの人々が注目する程だった。
だが私達には、それを気にできるくらいの余裕はなかった。
ロナルドは、私の顎をつかんでいた手を戻す。
「クロエと俺が初めて会ったときのこと、思い出してみ?」
彼は先程より少し、穏やかな表情で私に語りかけた。
「あのとき、クロエを勝手にあの場所に連れてったのは俺だし、エマに色々と頼んだのも俺」
「……だけど」
「クロエのせいでこうなったんじゃなくて、俺がクロエのことを巻き込んだんだよ。結果的にね」
「でも、私が元凶であることに変わりはない」
ロナルドは肩をすくめた。
「どうしてそうなるかなー」
私はまた俯いた。
「前にも言ったと思うけど、全部俺がクロエを助けたいって思ってやってきたことなんだって」
俯いたまま聞いていた。
「わかってもらえねぇかな……」
そんな私の頭を、ロナルドはいつものように撫でた。
「……前に、クロエをこの手から離したくないって、言ったろ」
手を戻したロナルドは、そのまま続けた。
「他の誰の所へも行くな、とも言ったよな」
私はゆっくり、顔を上げて彼を見た。
「迷惑なんて掛けたって良いんだよ、俺なんだから。もっとこうしたいって、ワガママ言っても良い。辛いときは辛いって、俺に泣きついても良い。だって俺はクロエを」