第6章 真実への扉
そんな中、ロナルドが口を開いた。
「あのさ、クロエ」
「……何?」
「ギュッてしても良い?」
その意味を理解するのに少し時間が掛かった。
「あーごめん! 嫌ならいいんだけど」
言葉を最後まで聞く前に、私からロナルドの胸元に抱きついた。
「おっと」
「……こう?」
ロナルドも私の体を抱きしめてくれた。
「うん。良いカンジ」
そのまま二人は眠りに落ちた。
翌朝目が覚めると、隣にいたはずのロナルドの姿がなかった。
暖炉の火も消えている。
中央付近にある台にメモが置いてあり、『回収に行ってくるから、ここで待っているように』という内容だった。
この部屋の鍵は、施錠後に主人に預けたらしい。
時計はまだ朝の7時少し前を指している。
死神の仕事……毎日大変なのだろう。
私はいつでも出られるように用意を始めた。
支度を終え、待っていると誰かが扉を叩いた。
返事をすると、その主はロナルドだった。
彼の声を聞いて、何故かすごく嬉しくなっている自分がいる。
ロナルドは鍵を開けて部屋に入ってきた。
彼は少しシリアスな雰囲気を醸し出していた。
「クロエ、もう出る準備はできてる?」
「すぐ出られるよ。……どうかした?」
「うん。ちょっと話がある」
宿に併設されているレストランに入った。
私はベイクドビーンズを食べていた。ロナルドは紅茶だけを啜っている。
彼は依然として真剣な表情をしていた。
「エマから知らせがあってさ」
「うん……」
「どうも管理課が色々と嗅ぎ回ってるらしくて」
管理課。昨夜、ロナルドに招集をかけたのが、彼らだ。
会ったばかりの頃のエマも、管理課に私を会わせることは出来ない、というようなことを話していた。
「協会内に部外者がいるんじゃないかって話が出たらしいんだよね」
いずれはそうなるだろうと思ってはいたが、ついにこの時が来てしまったか。
「関係者として俺の名前も上がってるっぽい。昨日わざわざ俺に仕事回したのも、動向を探ってのことだって話だし」
ロナルドには迷惑を掛けたくなかった。
しかしながら、私を匿っている以上、それ自体が彼にとって迷惑なことであることは承知の上だった。
……わかっていた。わかってはいたが、彼の元を去ることが出来なかったのだ。
「だからもう、この前までみたいに、あの部屋で匿ってあげることが出来ない」
