第6章 真実への扉
先程のように座ったまま毛布に包まっていると、思っていたよりも早くロナルドがバスルームから出てきた。
下はいつも通りのパンツを履いているが、上はネクタイとベストを取ったシャツ一枚だった。
「ん、あれ? 寝てなかったの?」
「目が冴えちゃって」
「そっか。っつーか、何だその格好」
「暖かいよ」
「まぁ暖かそうだけど、普通に寝っ転がってれば良かったのに」
「ロナルドが寝る場所がなくなっちゃうと思って」
持っていたタオルを置き、彼はこちらへ来るとベッドに腰掛け、私を見て言った。
「何、俺もベッドで寝て良いの?」
「そ、そりゃ、ベッドは寝る為にあるものだし」
「クロエと一緒に?」
「えっとそれは……」
私が返答に困っていると、それを見たロナルドは声を上げて笑った。
「冗談だよ。大丈夫、俺はその辺で寝るからさ」
「その辺って、床しかないじゃない」
「暖炉もあるし、問題ないっしょ」
「問題あり過ぎ!」
今度は私が声を上げてしまった。
ロナルドは黙って私を見ている。
「……いいよ」
「え?」
「一緒に……寝ようよ」
ロナルドはまた黙った。
「あー、ほら。一人で寝るより暖かそうだし!」
まだ黙っている。
「あ……ごめんなさい。嫌だよね、一緒に寝るなんて」
黙っていたロナルドがようやく口を開いた。
「嫌なわけ、ないだろ」
「え……」
「むしろ、クロエが嫌がると思ってたからさ」
「そんな、嫌がるなんて」
私は、体を包んでいた毛布を剥いだ。
「……嫌なわけ、ないもん。そうじゃなかったら、戻って来てなんて、言わない」
ロナルドはそんな私の頭を、いつもしている黒い手袋を外した手で、優しく撫でた。
「うん。わかった」
二人でベッドに横になった。
向かい合った状態で寝てしまった為、目のやり場に困った。
私は仰向けに寝なおす。
横目で、ロナルドが眼鏡を外すのが見えた。
よく考えたら、眼鏡を取った彼を私は見たことがない。
ゆっくり、目線を彼の方へ向けた。
「やっぱり寝にくい? やめる?」
「ううん……! そんな事ないですとも!」
変な言葉が出た私を、彼はまた笑った。
そんな彼は、とても綺麗な顔をしていた。
その顔に見惚れ、つい体を仰向けからまた彼の方へ向けてしまった。