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【黒執事】スノードロップ【死神・裏】

第3章 芽生え


私達は席を立ち、店から外へ出た。
先程よりも、街全体が明るくなっていた。
繁華街の方へ歩いて行くと、ロナルドは立ち止まり、また手帳を確認した。

「そろそろだな」

少し離れた所から、女の悲鳴が聞こえた。
周りにいた人々の視線が、悲鳴の元へと集まる。

「クロエちゃんはここで待っててくれる?」

そう言って、ロナルドはデスサイズを引いて行ってしまった。
どうやら悲鳴を上げた女の前に、高齢の男が胸を押さえて倒れているようだ。
恐らく、ロナルドはその男の魂を回収しに行ったのだろう。
少しして、ロナルドが私の元へ戻ってきた。

「審査完了」

手帳に何かを記したようだ。

「備考特に無しっと。心臓発作だってさ。怖いよね、人間なんて些細なことですぐ死んじゃうんだから」

手帳をしまいながらそう言うと、ロナルドはまた歩き出した。
しばらく、ゆっくりとした歩調で進んでいく。すると、また真剣な様子で語り出した。

「さっきの話の続きなんだけど、実はここからが重要でさ」

私は彼の言葉に耳を傾ける。

「死亡予定者リストの改変が出来る奴なんてのは、言わずとも決まっている」

私も考えていた。そもそも、リストの内容を知っているのは。

「俺ら死神しかいない」
「やっぱり」
「死神が人間の生死に手を貸しているなら、マジで何が起こるかわからない。……だから、クロエちゃん」

ロナルドは立ち止まり、私の両肩に手を置いて、まっすぐ目を見て言った。

「絶対に俺から離れるな」

ロナルドの真剣な眼差しに、心打たれるものがあった。
約束だよと、念を押される。

その後、数件の回収を終え、辺りが暗くなってきた頃、死神派遣協会へと戻ってきた。
私を部屋に送り届けたときのロナルドの様子が、なんだか少し変に感じた。
一人になると、特にすることもない。
椅子に座って、今日起きた出来事を思い返していた。
ロナルドがご馳走してくれた、ポリッジの味。
初めて見た魂の回収。とは言っても、どのように回収しているのかは、人間の私にはさっぱりわからない。
それから、今回追うことになった事件の真実。そしてそれを語り終えたときの、ロナルドの真剣な眼差し。
彼のあの表情を思い出して、心拍数が上がった。
自分を心配して言ってくれたことが、すごく嬉しかった。
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