第2章 ***
「お待たせ」
それから20分程で部屋に戻ってきた九条さん。
部屋に備え付けてあったガウンを着ているその姿も渋くてカッコいい。
同じ物を身に着けているはずの私なんてちんちくりんなのに…
「何か飲みますか?」
「ワインでも一杯…と言いたいところだけど、今日はもう遅いしお水だけ貰おうかな」
「わかりました」
冷蔵庫で冷やしてあったミネラルウォーターをグラスに移し彼に手渡す。
そしてソファーに座る彼の隣に私も腰を下ろした。
「今日は色々あって大変だったけど…結月ちゃんの顔見たら、嫌な事全部吹き飛んじゃったな」
「…何かあったんですか?」
「まぁ色々とね…。結月ちゃんは何か変わった事無かった?受付で変な男にナンパされたりとか」
「あ、ありませんよ!」
「ホント?結月ちゃん可愛いから、僕毎日心配なんだけど」
「…またそんな事言って」
彼の軽口はどこまで信じて良いのか分からない。
勿論褒められて嫌な気はしないけれど。
「あれ、信じてない?だってこの僕が落とされたんだから、他の男が君にちょっかい出したっておかしくないでしょ」
「……、」
「結月ちゃんにはもっと自信を持ってほしいな」
「っ…」
グラスをテーブルの上に置いた彼が頬に触れてくる。
私を見下ろすその瞳は熱を孕んでいて…
「ん…」
ゆっくり近付いてくる顔に自然と目を閉じると、唇に触れるだけのキスをされた。
啄むような口付けを繰り返された後、その隙間から彼の舌が入ってくる。
「はっ…、」
思わず漏れてしまう吐息。
…九条さんはキスが上手い。
私なんかよりずっと経験豊富なのだから当然ではあるが、毎回キスだけで骨抜きにされてしまう。
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