第2章 ***
*
「…眠かったら寝てもいいよ」
「いえ…大丈夫です」
結局あの後3回もシてしまった私たち。
時刻はもう深夜2時を回っていた。
「あの……九条さん」
「ん…?」
「…ごめんなさい」
「……、どうしたのいきなり」
腕枕をしてくれている彼の方へ向き直り、謝罪の言葉を口にする。
今までずっと、私は彼の気持ちを疑っていたから…
「九条さんみたいなすごい人と一緒にいると…どうしても『私なんか』って卑屈になってしまうんです…」
「結月ちゃん…」
「もっと色々勉強しなくちゃ…とか、九条さんに釣り合うような素敵な女性にならなくちゃとか…正直プレッシャーを感じる事もあって…。今のままの私じゃいけないって思ったら余計に自信が持てなくなっ…」
そう言い終わる前にぎゅっときつく抱き締められた。
広い胸板に顔を押し付けられ、ドキンと心臓が跳ねる。
「そんな事思う必要なんかないよ」
「…え…?」
「僕は今のままの結月ちゃんが好きだし…それに……僕は君が思っている程すごい男じゃない。特に君の前では、そこらにいる男と何も変わらないよ?ただ好きな子の笑顔が見たくて必死になってる1人の男だ」
「……、」
「…だからもっと僕に甘えて?」
「…九条さん……」
顔を上げれば、甘いキスの雨が降ってくる。
今だって十分甘えさせてもらっているのに、これ以上甘やかされたら私は…
「九条さんがいなきゃ何も出来ないダメな人間になっちゃいます…」
「ハハッ、それはいいね。結月ちゃんを檻の中に閉じ込めて、ガッチガチに囲うのも悪くないかな」
「もぅ、またそんな事言って…」
「冗談……じゃないかもしれないよ?」
そう言って悪戯っぽく笑う彼。
その言葉がどこまで本気か分からないけれど…
(九条さんになら囲われても…)
なんて思っている私は、もうすでに彼に囚われてしまっているのかもしれない…
了