第3章 **
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「社長…例の件でK社よりお電話が入っております」
「解った…回してくれ」
「…畏まりました」
(ハァ…)
今日は年下の可愛い恋人とデートの約束をしているというのに、こういう日に限って何かトラブルが起きる。
遅くても21時には帰宅するつもりだったが、この調子では無理だろう。
南 結月。
20も年の離れた俺の恋人だ。
彼女を初めて見た時、文字通り『ビビビッ』と体に電流が走ったような感覚に陥った。
誰もが振り返るような美人という訳ではない。
けれど愛嬌のある可愛い笑顔と、ふわりと柔らかい雰囲気に目を奪われて…
『今度一緒に食事でもどうかな?』
気付けばそんな事を口走っていた。
初め彼女はからかわれているだけだと思っていたらしいが、二度目の誘いに戸惑いながらもOKを出してくれた。
その後も何度か食事に誘い、ようやく彼女と付き合う事が出来るようになり今に至る。
(とりあえずこの件は何とかなりそうだな…)
ひと通り電話でのやり取りを終えた後、俺はパソコンであるサイトを開いた。
以前彼女が欲しがっていたバッグのブランドのサイト。
別に強請られた訳ではないが(むしろ彼女はそんな事しない)、きっと今日待たせてしまうであろうお詫びにプレゼントしようと思ったからだ。
俺は知り合いの伝手を使い、今日中にそのバッグを会社に届けてもらうよう頼んだ。
彼女が少しでも喜んでくれればいいのだけれど…
その笑顔を想像すると、頬の筋肉が弛んでしまいそうになる。
端から見れば、年甲斐もないと呆れられるかもしれない。
それでも俺は…
(さて…残りの仕事を片付けるか)
そっとノートパソコンを閉じる。
可愛い恋人の姿を思い浮かべながら…
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