第1章 バニラ
ココアがいっぱいあったから、それを作って持っていった。
テーブルに置くと、ちょっとだけニノは顔を上げた。
中学生くらい…?
ちょうど入所してきた頃のニノだ。
「やっぱり…俺、変わったよね?」
「ああ…」
自分でも信じられないのか、絶望したように顔を手のひらで覆った。
「どうしよう…週末には大阪でわくわくなのに…」
「何があったんだよ…ニノ」
「わかんない…今日、休みで…」
朝、というか昼間に目が覚めたらこうなってたとニノは言う。
「…なんか変なもの飲んだりとかした?薬とか…」
コナンかよって思うけど、そんなことしか思い浮かばなかった。
「してない…ドラマの撮影期間中にそんな危険なことするわけないじゃん…」
「だよな」
つか、これ夢?
ニノの隣に腰掛けて自分のほっぺたをつねってみた。
「痛…」
「…なにやってんの?」
「いや…夢かと思って…」
「何いってんの?」
「いや…だって…」
手を外したニノの顔を改めて眺めてみた。
「だって…どうなってんだよ…」
「そんなのこっちが聞きたいよ…」
今にも泣き出しそうな顔をして…
「ああっ…こ、ココア飲め!な?ちょっと落ち着け」
「…うん…」
涙目になってるニノに、マグカップを手渡してやった。