第7章 ショコラ scene5
今になって怖くなってきた。
「あれ、翔ちゃん、顔色悪いよ?」
「いっ…いや、なんでもない」
「どおしたの~?」
「なんでもないってば…」
「あーっ!俺だったら失敗したかもって思ってんでしょ?」
「ち、ち、ちが…」
「嘘つくと、翔ちゃんってどもるよねっ」
つーんと雅紀は横を向いてしまった。
「ま、雅紀ぃ…」
ぶーっと幸雄さんが噴き出してしまった。
「ぶ…ぶ…す、すいません…」
「いや…こちらこそ…」
みゃあっとちかちゃん猫が鳴くから、なんとかその場をごまかすことができた。
「ちかちゃん…幸雄さんの家、行く?」
ちかちゃん猫は、耳をぴんっと立てた。
「あのね、俺は仕事で忙しいし…ちかちゃんがお嫁さんになるお手伝いね、幸雄さんの家のほうが、できると思うんだ」
にゃあとか細く鳴く。
「俺も、時間を見て会いに行く。だから、幸雄さんの家で過ごしてみない?」
「寂しかったら、帰ってきてもいいよ!このお家に」
「そうだな…ペット飼えるか、聞いてみないとだけど…」
雅紀が言うと、ちかちゃん猫はキョロキョロと俺と雅紀の顔を見た。
「ちかちゃん…どうかな?」
幸雄さんが言うと、まっすぐ顔を見上げた。
「にゃあっ」
どうやら、OKみたいだった。
「気が変わらないうちに…行きますね…」
なんか幸雄さんが慌てだした。
「じゃ、じゃあ、家まで送りますよ」
「いえ、大丈夫ですよ」
「でも、猫持ってたら、タクシーも電車も乗れませんよ?キャリーバッグないし」
「あ…そうか…」
念の為、ちかちゃん猫を洗濯ネットに入れて、運ぶことにした。
「ごめんね…ちょっとの間我慢してね?」
俺がいうと、ちょっと不満げな鳴き声を漏らしたが、おとなしくなった。
「あ、かあさまの言うこと聞いたね」
雅紀が笑ってくれた。
「ちかちゃん…いい子だなぁ…」
「うん!ちかちゃん!いい子にしてたら、お嫁さまにすぐなれるよ!」
そう話すと、にゃああと元気に返事をしてくれた。