第7章 ショコラ scene5
「へ…?」
当たり前じゃないか…しっかり休むに決まってんだろ。
何いってんだ?
「あー!幸雄さん、送りますんで…」
バタバタ荷物をまとめながら、チーフが言うと幸雄さんは手を振った。
「いえいえ。僕、ここから一人で帰れますし。大丈夫です」
「でも…」
「いいんです。チーフさん、お風呂も入ってないでしょう?大丈夫ですよ」
「すいません…幸雄さん…」
時間がないみたいで、あっという間にチーフは帰っていった。
「なんなんだ…」
「あの…」
「あ、はい…」
玄関の鍵を締めて戻ると、幸雄さんはちかちゃん猫を抱っこしたまま、リビングに立っていた。
「ちかちゃん、僕が引き取っていいですか?」
「えっ…」
「いや、僕と言うより行長の家で…」
「あ…そうか。先生の家に居たほうが、ちかちゃんのお願い叶いやすいってことですかね?」
「そうなんです…僕じゃ、どうしてあげることもできませんしね…」
そう言って、苦笑いした。
「この猫…ちかちゃんのお母さんが、ここに呼んだみたいなんです」
「えっ?」
「今は僕も、形代を着ていないので視えないんですが…」
あの時。
猫が飛び込んできた時、一緒にちかちゃんのお母さんも来ていたんだと、幸雄さんは言った。