第7章 ショコラ scene5
「にゃ~…」
黒い子猫も、なんだか雅紀に甘えてる。
「なんだこりゃ…」
がっくりと力が抜けて、チーフと一緒に床にへたっていたら、幸雄さんがそっと雅紀に近寄った。
「ちかちゃん…」
「ゆきお兄さま、この子かわいい…」
ふふっと笑うと、子猫を抱き上げた。
「そっか…」
幸雄さんも、子猫の頭を撫でた。
そのままローテーブルに腰掛けた。
「櫻井さん…」
「はい?」
ちらっとこっちを見ると、また雅紀に向き直った。
「この猫を使いましょう」
「えっ…?」
「今から、父に回線を繋ぎます。一気にやりましょう」
「あっ…はいっ…」
慌てて雅紀の座るソファに近づくと、幸雄さんはまた膝に腕をついて祈るような格好になった。
雅紀は目を白黒させている。
「ゆきお兄さま…?」
「ちかちゃん…」
猫がびっくりしないように、そっと横に座ると、不安げな目を向けてきた。
「大丈夫…ちかちゃん…」
「ええ…」
ちょっと大人びた返事の仕方だった。
やっぱり、成長してるんだ。
大人になって…お嫁さんになる…
そのために、ちかちゃんの霊体は成長し続けているんだ。
中身は5歳の子供のままで…