第7章 ショコラ scene5
「はあ~…しかしどうしよう…」
うーんとまた唸って、下を向いている。
「人形に移ってもらうのがだめとなると…無理やり剥がすしかないんですが…」
「えっ…」
「でも、せっかく本人に出ていく意思があるから、穏便にしたいし…」
ボリボリと頭を掻く。
「それに僕が、剥がすとなるとちょっと…」
「幸雄さんはそういうことは…」
「父のアシスタントとしてやったことはありますがね。僕がメインでっていうのはやったことがないんです」
そうだよねえ…跡継ぎでもないわけだし。
幸雄さんは将来はESPの研究者になるのが決まってるわけだし。
「僕は父と違って、そういう勉強をやったわけではないので…」
「ですよねえ…」
行長先生は、霊魂のことだけでなく呪術なんかにも非常に詳しい。
本当にこの道で生きていらした方なんだなあと、深く尊敬してる。
それに、人間心理というか…霊魂心理っていうのかな。
ものすごく鋭い。
慧眼というのだろうか。
きっとものすごく、過去にはいろんな経験をされてきたに違いない。
「どうするかな…」
もぐもぐとクッキーを食べながら、悩んでいる。
「移ってもらうだけなら、手助けはできるんですがね…」