第7章 ショコラ scene5
「うん…」
「ちかちゃんは、女の子の身体に戻りたいよね…?」
「うん…およめさまになりたいの…かあさまに見せたいの…」
目を閉じながら、ぽろぽろと涙を溢す。
「じゃあ、僕と僕のお父さんが、お手伝いするから、雅紀くんの身体から離れよう」
ぐずっと鼻をすすると、雅紀は目を開けた。
「…どうやるの…?ちか、やり方がわからない…」
俺もどうするのか、皆目わからなかった。
そりゃ、ちかちゃん自身が出ていこうという意思は持ってくれてる。
だけど、どうやって…?
行長先生の代わりに、幸雄さんがまさか術を使うのか?
形代でそこまでのことができるようになるのか?
今までは、追い出すとか調伏とか…そんなんばっかりで。
穏便に出ていってもらうっていうことが、イマイチ想像できなかった。
(黒は勝手に来て、勝手に去っていくし…)
幸雄さんはおもむろに、テーブルの横に置いていたカバンを手にとった。
中を探ると、何か取り出した。
「あのね…ちかちゃん…」
手にしているのは、日本人形だった。
赤い着物を着た、おかっぱ頭のかわいいものだった。
「この中に、入ろうか?」