第7章 ショコラ scene5
「お守りくれたのに…かあさま…ごめんなさい…」
「お守り…?」
幸雄さんが俺の顔を見た。
「お守りって…」
思わず声を出してしまって、慌てて口を押さえた。
幸雄さんは頷くと先を促した。
「俺、今年の正月に、神社でちかちゃんに会ったんです」
「ほう…」
その言い方も先生そっくりだった。
「あっ…その、この前、夢みたんです…神社で、お参りしている夢を…だから、あれがちかちゃんだってわかったんですけど…」
そういえば、夢の中で”かあさま”はちかちゃんにお守りを買ってあげると言っていた。
ここまで説明していなかったから、焦った。
メモでもしておけばよかった…
「なんで視えたのかはわかりませんが…その正月に会った時、ちかちゃんにとんぼ玉のついたお守りをあげたんです」
「…なるほど…」
またこめかみに手を当てると、幸雄さんは苦笑いした。
「…おそらくその時に、ちかちゃんは櫻井さんについてきてしまったんでしょうね…と、父が言っています」
「でしょうね…」
やっぱり…俺が呼びこんでしまったようなもんだ…
「でもこれで……ええ、理由がはっきりしましたから……」
行長先生と対話しながらなのか、幸雄さんは途切れ途切れ喋った。
「あとは、ちかちゃんにお嫁さんになってもらえばいいんですが…」
また、うーんと幸雄さんは唸った。
「櫻井さんはちかちゃんのお母さんですし……うん……だから、お婿さんにはなってもらえませんねぇ…」